小暮博則の著名人対談 【♯2 竹中恭二氏】 〜Choice道楽倶楽部〜

自動車開発とゴルフの共通点とは?

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第二回目は富士重工業元社長の竹中恭二氏。

大坂市立大学工学部出身のエンジニアで、商品企画部を進んでこられ、54歳の頃、25人抜きで社長に就任。
在任期間では、「プレミアムブランド」の推進を掲げるとともに、2004年日本で初開催となるWRC( 世界ラリー選手権)第11戦 ラリージャパンで、スバルインプレッサを駆るぺター・ ソルベルグが見事に地元優勝を飾り、世界的にその名前と実績を広めました。

今までを振り返って見ると、エンジニアとして問題解決に取り組む事と、それを楽しむことがあり、幾度の失敗を乗り越えて今があると仰っていました。
ゴルフとの共通点を踏まえて、早速、紐解いていきましょう。

安全への思い

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竹中 飛行機や電車はプロの操縦士が運転するものだとしたら、2~3万個の部品で作られている自動車はどなたでも安心して運転を楽しめるように開発しなければなりません。
その為、安全には特に注意して臨んでいます。独自を保った開発の根底には、運転を楽しむ為の前提、安全がしっかりと図られているのです。

小暮 ゴルフに於いても同じく、プロもアマチュアも楽しめるコースであり、用具用品の開発研究がなされていて、安全を守ることが大原則になっております。

竹中 自動車の開発でいえば、1991年秋、『第29回東京モーターショー』では、全車との車間距離を一定に保つ「安全間隔走行」、走行レーンを認識して逸脱しないように走る「車線追随走行」、衝突を回避、または自動的に停止する「障害物回避」などの可能性を示しました。

小暮 似たようなことでいえば、ゴルフカートにも、前にプレーヤーがいたら自動的に止まるシステムは早くから導入されていましたね。

竹中 これをベースに現在の「アイサイト」に至るSUBARU独自のステレオカメラによる運動支援システム構想が始まったのです。私たちゴルファーがプレー後に帰宅するまでの車運転にも、この「アイサイト」が大変役立っています。プレーを楽しんだ後に、安心して車で帰れることも、長年に渡る開発の恩恵を受けています。

小暮 ゴルフは飛距離を争うことや、小技の精度を競うことも楽しみの一つです。
楽しみ方はそれぞれ違いますが、竹中さんにとって、ゴルフの楽しみはなんでしょうか?

竹中 何かが上手く行かない事が起きた場合、問題解決をしなければ先に進む事は出来ません。
例えば、自動車の場合、部品一つ一つのアローアンス(誤差の許容範囲)があります。この調整を行わないと全体の完成とはなりません。ゴルフの場合、当初クラブやボールのアローアンス(ミスヒットの許容範囲)を気にしていましたが、それ以上に自分自身の誤差の方がはるかに大きいことに気が付きました(笑)

小暮 いいスウィングを再現することは、我々プロでも難しいことです。

竹中 失敗をなしに開発が進まないように、ミスショットをなしに、グットヒットは生まれない。ミスの問題解決は、楽しさを感じる瞬間でもあります。

小暮 それはエンジニアならではの着眼点といえますね。

竹中 問題解決のため、練習して誤差を少なくする事が当然なのですが、同時にあることに気が付きました。それは新しいクラブに変えたとき、新鮮な気持ちでゴルフに臨め、プレーも楽しめるということです。定期的にクラブをローテーションして使用することも楽しみ方のひとつだと感じています。

小暮 得意なクラブはなんですか?

竹中 得意といいますか、ボールの位置やフェース面、スウィング軌道により、多彩な技を駆使してカップに寄せることが出来るアプローチは面白く、一番好きですね。

小暮 確かに、ゴルファーにとって飛距離は飛ぶか飛ばないかで、判断することが多いでしょうが、それに比べてアプローチは、寄るのが正解で打ち方は多様にありますものね。

竹中 ミスが許されない緊張した場面で決めることができたら、これほど嬉しいことはない。この想いは、開発と成功の話に似ているような気がします。

25人抜きと言われるのは嫌?

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小暮 さて、話はビジネスマンの方なら誰でも興味がある、成功へのポイントをお聞きしたいと思います。「25人抜きでの社長就任」どのようにお考えでしょうか?

竹中「25人抜き」は、当時ならまだニュースバリューがありましたが、若返りが当たり前になった昨今では、ほとんど価値がないと思います。 私は25人抜きといわれるのが一番嫌でしたし、今でも書いてほしくないです! 当時、私よりずっと優れた方が大勢おられましたし、私を社長にしたのは、私自身ではなく、前任の社長なのですから。それが偉いというなら、前任の社長が偉いのです。

小暮 大変勉強になります。では、社長への強いこだわりがあったから、社長になれたと思いますか? また、今の若者はみんな社長になりたいと思っているのでしょうか?

竹中 昨今の若者に聞くと否定しますね。「役員にはなっても、社長にはなりたくない」と。私も正直「社長になりたい」とか、「社長になる」とか露ほどにも思っていませんでしたし。

小暮  では、どのような方が社長になれるのでしょうか?

竹中 トップになるには、「巡り合わせ」ですね。平たく言うと「運」でしょう! それと現在のトップの方々に信頼していただける自分であるかどうか、に尽きるでしょう。ゴマ摺りではなく、「実務」において信頼を得ているか?かな。それには、自分の信じることをトップに直言できるか? その勇気が自分にあるか? いくら才能があっても実務で成果が発揮できなければ意味がない。「天才ゴルファー」と言われても「ツアーで優勝しなければトッププロとは評価されない」のと同じことですかね?

小暮 天才ゴルファーも、実務が無ければ、成功をつかむ事は難しい。確かに、多くのジュニア期を天才と呼ばれた選手が、すべて活躍することは難しいと言えます。力を磨く努力を継続して行わなければならないと言えると思います。竹中さんが、大切にされている信条はございますか?

竹中 格好のよい信条なんかはありません。自分が、いま好きなことに邁進することだけです。

小暮 なるほど。実にシンプルな考え方ですね。飾らない、自分の気持ちに素直に行動できるからこそ、周囲の理解、協力を得られる、最後までやりぬく胆力を練ることができるのですね。

<対談後記>

たとえば、経済書をたくさん読んでも、その真意を学ぶことはできません。
なぜなら、ビジネスモデルを探す以前に、心のモデルを享受できないからです。

今回、竹中恭二氏との対談は、エンジニアとしてのお考えと、それを貫く気持ち、集中と選択、提携と解消と次への布石をお聞きする事ができました。

その中で一番印象的だったフレーズは『楽しむこと』です。

“ドライブを楽しむように、ゴルフを楽しむ”とは、多様性を考え、ひとつひとつ答えを探していくことであり、時に答えが見えない時でさえ、それ自体を楽しむことだと思います。